対立から「人を活かす」経営への眼差し 簑原麻穂さん

株式会社スコラ・コンサルトで、多種多様な業種20人~10万人規模の企業の業績の向上・回復を導いてきたプロセスデザイナー・簑原麻穂さん。簑原さんはこれまでに、経営者に徹底して寄り添い良きアドバイザー兼温かみある伴走者として数々の企業の再建に携ってきました。ベストセラー 『なぜ会社は変われないのか』の著者・ 柴田昌治氏からは「本当の仲間とは こういう女性!」と賛辞の言葉を贈られています。そんな簑原さんが、生い立ちからこれまでの歩みを振り返りました。

身近な経営― 使命感を持ち合わせていた幼少期

私は、3人兄姉の末っ子で、7歳上の兄と4歳上の姉がいます。特攻隊員の生き残りの父は、今、92歳。経営者でした。会社は兄が継いだのですが今も会社に通勤していて、社員の方と食事をしては楽しそうに帰ってきます。「コロナは怖くないの?」と聞くのですが、「大丈夫や。マスクも手洗いもしとる。もしかかったらあとは、あの世にいくだけや。」と言っています。母は専業主婦でしたが、数年前に亡くなりました。父も母も九州生まれです。

全員参画経営』にも書きましたが、母は母性の塊のような人で、私の強みが伸びるよう心を配っては、「あなたは何でもできるのよ。そして、諦めない子なのよ。」と言ってくれました。引っ込み思案だった私を、前に出そう、前に出そうとしてくれたのですね。

私にやりたいことがあると、いい先生を見つけようとしてくれたり、いい見本を持ってきたてくれたりもしました。音楽にしても「最高の音楽を聴きなさい」と言ってくれたりと、とてもいい環境づくりをしてくれました。

父は、厳しい人でした。特攻隊にいましたし、会社でも怖い社長だったようです。若いころから世界を巡っていたので、「これからの時代は手に職をつけなくてはだめだ。女性が専業主婦でいる時代は終わっていくから、君は何か手に職を持ち仕事をしなさい。」と、私が6歳くらいのころからずっと言い聞かせていました。ですから私は、小さいころから「この進学で手に職をつけることができるのか?」などど考える子どもでしたね。

父は中小企業の経営者で、何回か経営が厳しい時期がありました。母は、子供たちの気を引き締めるために、「お父さんの会社は倒産するかもしれない」とそのたびに言っていました。幼い私は、おちおち眠ってもいられません。幼い頃は不安で母親に「大丈夫だよね?」と何回も質問していたそうです。成長するプロセスで父から経営の話を直接聞くことが多くなり、私自身が直接経営はできないけれど、「うちの会社が倒産しないために、何をしたらいいのだろう?」と考える思考回路や使命感が生まれてきたのだと思います。まあ、そんな環境にいましたから、小学校の時くらいから、やけに冷静で、大人の様子を見ていて子どもっぽくない子どもと言われたりもしました。

そんな私が小学校のときに、転機となる出来事がありました。それは、人の能力を引き出す素敵な担任の先生に出会った、ということです。授業がとても楽しくて、最初と最後には必ず笑わせてくれるのです。しょうもないダジャレなのですけれど、それで皆が「わー!」と笑って気分を開放させたあとに、ドリルや試験をさせるなど、開放と集中を上手に扱い、生徒のことがよく分かっていました。

またその先生は、体育の授業の時、体操が得意だけれども引っ込み思案な私を毎回指名し「皆の前で見本をみせる」ということをさせてくれました。その当時の私は疑いもせず、「あの先生が言うんだから出来るんだろうなぁと思って挑戦する」という不思議な魔法の習慣を身に付けることができ、人前に出るのが怖くなくなりました。このクラスは、勉強もスポーツも学年1位になりましたが、これは先生が生徒それぞれの強みを引き出してくれていたからなんだと思います。本当にすごい先生でした。この先生から学んだことは、私の鮮明な記憶として残っていますし、結果、『全員参画経営』にも反映されているのだと思います。

適材適所の先を行く、フォーメーションという考え方

就職先の経営統合― 行き場のない思いが今の仕事に活きる

私は、JASという会社が大好きでしたので、正直統合はショックでしたが、決まったのであれば、双方の強みが生かされた結果にしたいと思っていました。統合する過程で、強みや誇りに思っているものを手離すプロセスや、存在を守る為のサバイバルゲームが始まるなど、私自身もアイデンティティが崩れそうになる時期もありました。統合プロセスで職場の仲間がメンタルに支障をきたしたりして、仲間がどんどんいなくなっていきました。そんな中、「私にできることは何だろう?ここに私が存在する必要があるならば、それは何なのだろうか?」と自分の存在価値を見つめなおしながら、共に新たな価値を創造したいのになかなかできないジレンマに悩まされた時期がありました。

これらの過程で私は、「自分たちが大切にしてきた強みをどう残し、新たに創造するのか」また、「避けられない変化に対応して自分がどう変わっていくべきか」を考え続けました。その後、ある程度自分のやれることはやり切ってJALを退職しました。

自分たちだけが勝ち残る「対立&戦う経営」 から、自分らしさを活かし、喜びを生みだす「自己変容&豊かな経営」へ

その後、スコラ・コンサルトのホームページで「人の能力には無限の可能性がある」というような言葉を見つけました。それで、思ったのです。「私がJALとJASの統合のときに、解決できなかったことが解決できるかもしれない」。この統合で、それぞれ強みを持ちながら、統合でそれがいかされず、崩れていくのを見ていた私は、「あのプロセスをなんとか防げなかったのかな」と。「この仕事なら、その答えが見つけられるかもしれない」と思ったのです。

私がスコラ・コンサルトでご支援するのは、『全員参画経営』にも登場するような、M&Aや統廃合などの会社が多く、会社がなくなるのではないか?という不安や恐怖を感じている人たちの苦しみを目の当たりにしているわけですが、こういったフェーズの企業の方との出会いが多いのは、私の人生の命題としてあるのかな、と思ったりもします。

待ったなしの改革が必要!社員が自ら再生に動き出すには?

ところで、先程、小学生のときには先生に自信をつけさせてもらったと話しましたが、実は、私は、航空会社に入社した時、モノゴトの進むスピードについていけず、仕事を覚えるがほんとに遅かったんです。

深田祐介さんの小説『スチュワーデス物語』に出てくる「のろまな亀」のような感じで「性格はいいけれど、物覚えは最悪やな」と言われもしました。何故そうなのかというと、私は「全体の流れやつながり、理屈が分からないと理解がなかなか進まない」のです。私が仕事を覚えるには、その仕事の意味やつながり、目的が分かっている必要があったのですね。何とか納得しようと先輩に疑問を尋ねても、私の理解が進むような説明がもらえなかったり、時には間違えた答えが返ってきたりもしました。

ある先輩が、我々新入社員に対して、「近頃の若い子たちは、すぐに物を聞いてくる」と言ったのを聞いて、「ならば、質問しないようにすればいいんだな」と、結構な量のマニュアルを枕代わりにして、毎晩読み込み丸ごと暗記しました。マニュアルを読み進めると全体の流れやつながりが見え始め、面白くなり理解が進みました。これを起点に仕事がどんどん楽しくなったことを覚えています。

結果、私はのちに教官になるわけですが、私自身の出来が悪かったことが強みになり、なかなか理解が進まない人が「何故そうなるのか?」がとてもよく分かるようになりました。

なので、私は、仕事を覚えるのに苦労した人の方が教えるのが上手なのではないかと思っていて、周りからは、あまり覚えが良くないと思われている部下をよく教官に任命しました。ある女性の部下は私が教官に任命した際に、本当に悩み、絶対できないと苦しんだようですが、最終的には、丁寧で分かりやすい教え方をする立派な教官に育ちましたよ。

そのプロセスはしっかり見ていましたが、時に泣きじゃくりながらマニュアルを読み込み、必死に質問をしてくる彼女を見て、とてもほほえましく思ったものです。今の仕事で、企業のいろいろな人を見ていても、強みを持っているのに、まだ開発や発揮ができていない方はたくさんいらっしゃいます。

私は、「人の能力には無限の可能性がある」と信じています。ただ、自分自身でその能力を自覚し自ら磨くことができる人は思ったより少なく、それを引き出してくれるリーダーや仲間が必要なんだとは思います。『全員参画経営』の帯に「人の能力は配置で変わる!」とありますが、そういった意味でも、「自分が能力を発揮できるポジションを自覚し、自らそのポジションを取りに行く、そしてそれを周りの人も相互でサポートする」こういう組織やフォーメ―ションが作れる会社・企業を増やしたいと思っています。

―簑原麻穂(Minohara Asaho)

簔原さん250

スコラ・コンサルト プロセスデザイナー

泣く子も笑わせる関西出身。 JASに就職し、チーム連携と新商品開発による顧客価値アップを実現したのち、JALとの統合プロジェクトにも参画。 リーダー育成や教育のしくみづくり、組織・システム統合、 新サービスの開発など組織の機能と マインド両面の変革を 要求される多数のプロジェクトに貢献。 その後、事業の成長と 人材と組織の関係をつきつめるべくスコラ・コンサルトの門をたたく。 積み重ねてきた幅広い経験から、中堅企業の尖ったサービスに専心する喜びと、 大企業で大きなシステムを動かす醍醐味、 どちらにも鼻が利く。加えて、経営者である父や引き継いだ兄との対話で磨いた感性が武器でリアリストでありそこはかとなくストイック。次世代経営者の良きアドバイザー兼温かみある伴走者として、中堅企業の尖ったサービスに専心する喜びと、大企業で大きなシステムを動かす醍醐味、 どちらにも鼻が利く。 加えて、経営者である父や引き継いだ兄との対話で 磨いてきた感性が武器で、 リアリストでありそこはかとなくストイック。 次世代経営者の良きアドバイザー兼温かみある伴走者として、粘り強い支援が特徴。経営者やリーダーの悩みや葛藤を受けとめながら、真の強みをとことん引き出す。その上で、事業をもう一段階成長させるために必要な要素を独自のバランス理論で見立てて、 人の持ち味・能力・経験の組み合わせで構築する。「組織の変革を成功させるために は、男女を問わず、人の強みを活かし合える環境が大切」。そこにある素材で最高の料理をつくる。

全員参画経営の紹介

多種多様な業種20人~10万人規模の企業の業績の向上・回復を導いてきたプロセスデザイナー・簑原麻穂さんによる経営の指南書。

父性性」「母性性」という著者ならではの観点から、経営者の思考バランスを整え、経営者やリーダーと社員がお互いの強みや能力を認め合い、高め合い、意思をもってつながり、目的をもって動けるチームフォーメーションを作り上げます。

本書は、実話に基づいたストーリーを通して、業績回復までのプロセスが、分かりやすく描かれています。

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㈱エッセンシャル出版は、「本質」を共に探求し、共に「創造」していく出版社です。本を真剣につくり続けて20年以上になります。読み捨てられるような本ではなく、なんとなく持ち続けて、何かあった時にふと思い出して、再度、手に取りたくなるような本を作っていきたいと思っています。

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