「全員参画経営」簑原麻穂さんインタビュ―Q&A③ ―身近な疑問から考える

 

■職場での具体的な悩みを簑原さんにQ!

Q.「モヤモヤガタリ」をしたいと思うのですが、匿名であれば言えていたことが、記名やミーティングの場になると言えなくなる社員が多いです。こういう場合の打開策を教えていただきたいです。

「モヤモヤガタリ」

日頃仕事でモヤモヤしていること(経営方針や人間関係なども含めて)を語り合うこと。

A. 顔を合わせると言えないということは、周りに対する安心感がない可能性があります。

自分が何か発言すると否定されたり、足を引っ張られたりするのではないか?と思ったり、また、そういった経験をしたことがあるなど色々な理由があるのでしょう。ですから、まずは、その方に個別でゆっくりお話を聴き、言えない理由を教えてもらいます。

相手の状況を理解してあげることが大切です。最初にオフサイトミーティングなどの場を作るときは、安心できる仲間とチームを組むなど、少し配慮が必要かもしれません。

我々が、最初は同じ階層のメンバーでオフサイトミーティングを実施するのも、言いやすい環境をつくるためです。特に同じ部署で上下階層が混ざっている場合は、上司は大丈夫だというケースは多いものの、本音は出にくいことがほとんどなので、あまり設定しません。

Q. 当社でもオフサイトミーティングがありますが、チームメンバーは嫌がります。どうしたら皆が本気で本音で話すようになるのでしょうか。

A. 「なぜ、本音を話す必要があるのか」「オフサイトの意味や目的は何なのだろうか」「自分は理解ができない」など、嫌がる理由があるのだと思います。もし、本音で話す意味や目的が見つからないというのであれば、その場の目的や改革の目的がはっきりしていないか、「本音を話すこと」が目的になってしまっている可能性があるかもしれません。

Q. 私より年次が上で、役職が下の方が私に執着して、周りの方に迷惑を掛けています。私は当事者、これについて何かを発言することができないでいます。どうしたらいいでしょうか。

A. その人が夢中になれることや、仕事で価値が高まることが見つかるとよいですよね。

いじめや妬みは、自分の存在価値が自分自身で感じられないときや、自分の強みが見つかっていない、まわりに大切にされていないと思い込んでいる時に起こりやすいです。新しいことを始めたり、仕事で活躍できたり、貢献実感が生まれると、そういった構図がなくなりやすい傾向にあります。

Q. 社内で様々な意見があり、オフサイトミーティングやジブンガタリのような、若手社員対象のヒアリングを実施したことがありました。

この際、運営側には、「業務時間内に行う以上、ただの愚痴大会になってはいけないけれど、本音は引き出したい」という思いがありました。有効な時間活用にするため、より良いファシリテート方法があれば教えていただきたいです。

A. 愚痴が溜まっているのであれば、吐き出す必要があるのかもしれません。

それにフタをした状態ですすめても、結果的にまた揺り戻しが起こります。本音はホッとしたときに出ますから、話し合うメンバーの組み合わせや、リラックスできるようにコーディネートをすることが大切だと思います。

また、コーディネーターがフラットであることが重要です。コーディネーターが一人で抱え込んだり、何とか良い場にしようと頑張りすぎたりすると、周りは、よりコーディネーターに依存しますので、できるだけ場のメンバーに委ねるという勇気が大切です。

Q. トップ(リーダー)の立場ではない者が問題意識を持ち、「改革すべき」と考えた場合には、どのような順序で進めればよいでしょうか。特に、部下の声を聴く耳を持たなかったり、コミュニケーションが難しい上司の下にいる場合に有効な方法を教えていただきたいです。

A. まずは、同じような問題意識を持った仲間を探すことから始めます。また、直属の上司が理解してくれるのであれば、上司の想いや現状認識を聴き、「こういった改革が必要ではないか?」などと言って相談します。

理解をしてもらえない上司の場合は、その方は何に拘り、なぜこういった話に興味がないのか、また聴きたくないのかを知ろうとします。平行して、他部署の上司や、もう一つ上階層の上司など改革を押し進めてくれそうなスポンサーを探し出します。

いくら探しても見つからない場合は、一緒に解決する仲間を作りながら、横のつながりで、できる範囲から改革を押し進めることです。また、異動で上司が変わるなどのチャンスを待つことも大切です。

Q. 自組織においては組織長がメンバーの特性を理解しておらず、またメンバーも腹を割らない状態です。それを課題として声を上げてはみるものの、形式的に手段がまた追加されているだけなので、ズレを感じています。私自身は組織長でも経営者でもプロセスデザイナーでもないのですが、現状、非常に歯痒さを感じております。この現状に気付いてもらうにはどうしたらいいのでしょうか?

A. 組織長が一人で何とかしようと頑張っているか、自分一人で何とかできると思っているかなのかなと思います。組織長がズレていることを本人は自覚していない可能性もあります。

ただ、人の関係性を周りの人間が直接扱うのはとても難しく、あまり、うまくいくものではありません。そこで、「仕事がスムーズにいくようには?」「価値を高めるためにどうしたら良いのか?」など、「人」ではなく「コト」にフォーカスして相談すると、お互いもう少し客観的・俯瞰的に物事が見えてくるかもしれません。

Q. 新入社員の退職が多いのは、会社が社員に「やりがい」を求めすぎているのではないかと思っていました。やりがいは与えられるものではなく、努力・苦労をしても得られる方がまれだと考えていたのですが、やはりリーダーは部下のやりがい、やる気について意識しないといけないのでしょうか。

A. リーダーやマネジメントの役割は、メンバーが仕事を通じて能力を発揮している状態を創ることなので、意識はした方がよいと思います。機会や環境作りは、リーダーだからこそできるものですしね。

Q. どこの組織でも、個々の仕事のやり方や結果に差は出てきてしまうものだと思いますが、思うように仕事ができない人には、どんなアプローチをすればいいのでしょうか。

A. その人の生い立ちや、学生時代の勉強の仕方、学び方をよく聴くようにしています。

知識・技能がないのであれば、得意な学習方法で学んでもらいます。また、メンタル面に課題があるのであれば、思考行動パターンの認識の歪みや、囚われを開放する支援をします。周りとの比較よりは、その人が昨日より今日、今日より明日、成長しているかの視点でみると、確実に成長しているものです。

■簑原さん自身やコンサルタントの仕事について

Q. コンサルタントは、様々な職種、事業のコンサルをされると思うのですが、クライアントとなる企業の業務について、どの程度まで習得して取り組まれるのでしょうか?

A. できるだけ現場に足を運び、社員の方から仕事の流れや業務内容を教えていただきます。顧客のところまで付いていくことも多々あります。現場を観る、知る、学ぶことを、できるだけします。マニュアルや商品を見たり、実際購入して使ってみたこともあります。

Q. 所属している支店の、他の営業課支社の現状を把握するのにすら、難しさを感じています。当然のことですが、簑原さんが勤めたこともない会社のプロセスデザインを行なっていることを、本当に異次元のことのように感じます。

今まで全く知らない会社の現状を把握するだけでなく、解決のためのキーポイントを確実に掴んでいらっしゃいますが、そのコツは何でしょうか。

A. オペレーションを観るのが得意なので、業界関係なく、基本的には人の仕事の流れを見ています。

会社が存続するのに必要な要素は3つあります。

①事業の存在価値

②市場価値のある商品・サービス

③その価値を体現できる人・組織

このどれかが崩れてきているからこそ改革が必要なので、経営者の方と一緒に考えながらシナリオを構築します。

Q. 改革を一切受け入れない、聴く耳を持たない方もいらっしゃると思いますが、その場合、どう対応し、物事を進めていくのかお話を伺いたいです。

A. しばらくは、そっとしてあげてもよいかもしれませんね。

まず、エネルギーの高い方からアプローチをすると動きだしますし、徐々に動き出して、何となくうまくいっているように見ると乗ってくる方もいます。邪魔をされることがないのであればそのままにすることです。ただ、自分の意見は聴いてほしいというエネルギーが出ているのであれば、しっかり相手の意見を聴きましょう。

Q. 簑原さんでも苦手な方もいらっしゃると思いますが、そういった方と上手くやっていくために意識していることや、工夫していることがあれば教えてください。

A. 自分が相手に反応できる部分を見つけ、それを自覚することで安定させます。あまりうまくやっていこうという意識は持たず、仕事が滞ることなく、シームレスにできるように動きます。言いたいことは言いますし、自然な状態で関わります。

Q. 簑原さんは、キャリアカウンセラー、キャリアコンサルタントの資格を取得されていらっしゃいます。私も産業カウンセラーとキャリアコンサルタントの資格をもっているのですが、簑原さんが個人ではなく、組織へアプローチされるようになったきっかけはなんでしょうか?

A. もともと、人間の感情に興味があり、個人の成長や変容などを考えながらマネジメントをしていたのですが、前職で会社のブランディングや組織改革や企業統合に直接関わったので、否応なしに組織アプローチする立場になっています(笑)

Q. 簑原さんにとって、働くとは一言でいうと何でしょうか?

A. 働くとは、自分が生きている存在価値であり、自分が自己表現できることそのものだと思っています

Q. 様々な企業の支援を行う中で、最後まで傍観者であった組織メンバーがいたことはありましたか?なかなか気持ちに火がつかない現場では、どのようなアプローチをとられていましたか?

A. 最後まで傍観者であった方はいらっしゃいましたよ。でも、そういった人がいてもいいのです。全員が当事者になることは難しいと思っています。

しかし、その方もどこかの場面では当事者になっていたのかもしれませんね。また、反対していたわけではないので、その人なりに変化をしていたのかもしれません。火がつかない現場にも理由があるのだと思います。

職場のメンバーが自分のエネルギーの源泉を見つけることが大切なので、丁寧に個別でお話を聴いて、源泉を見つけられるような動きはしていましたね。

Q. 客観的に物事を見ることが苦手です。どうすれば『全員参画経営』の主人公篠田さん(簑原さん)のような能力を身につけられるのでしょうか。

A. 客観的に物事を見るということは、自分を客観視できることにつながっていきます。まずは、自分をよく理解することが必要です。

どんな人でも、感情的になっている時は、モノゴトを客観的には見れないものです。今、自分が感情的になっている、主観的だなと自覚することができたら、ある程度自分のことを客観的に見れているはずです。そこからスタートしましょう。

■『全員参画経営』の主人公・篠田亜子について

Q.  篠田さんは、道を誤ることなく立て直しのガイドをしていましたが、適切なアドバイスができるようになる、またはケースごとに適切な考え方ができるように導くスキルは、どう磨いたらよいでしょうか。

A.  亜子も実はたくさん失敗をしています。そういった意味では、亜子は失敗からとことん学ぶ力はあるのかもしれません。うまくいかないプロセスでその事実と苛立つ自分を受け入れ、それでも自分の想いを大切にしながら、「この会社が再生するには」「黒字になるには」「人の強みが生かされ、活躍できるフィールドを見つけるには何が必要なのか」を、とことん考えてきたのだと思います。

自分の不甲斐なさや、やるせなさと向き合いながら、誰の力を借りたら実現するのか、何の能力が必要なのか、何が足りないのかなど考え続けて見えてきたものを、相手に伝える。それがアドバイスになっていたのかもしれませんね。

Q. 幹部メンバーのガス抜きのシーンがありましたが、このようなときに気をつけることはありますか?

A. 評価や判断は入れずに、聴いてあげることと、受け止めてあげることです。人間は吐き出すとある程度落ち着くものなので、そうやって落ち着き始めたら、目的や意味を再確認するなどして方向性を合わせていくのがいいと思います。

―簑原麻穂(Minohara Asaho)

簔原さん250

スコラ・コンサルト プロセスデザイナー

泣く子も笑わせる関西出身。 JASに就職し、チーム連携と新商品開発による

顧客価値アップを実現したのち、JALとの統合プロジェクトにも参画。 リーダー育成や教育のしくみづくり、組織・システム統合、 新サービスの開発など組織の機能と マインド両面の変革を 要求される多数のプロジェクトに貢献。 その後、事業の成長と 人材と組織の関係をつきつめるべくスコラ・コンサルトの門をたたく。 積み重ねてきた幅広い経験から、中堅企業の尖ったサービスに専心する喜びと、 大企業で大きなシステムを動かす醍醐味、 どちらにも鼻が利く。加えて、経営者である父や引き継いだ兄との対話で磨いた感性が武器でリアリストでありそこはかとなくストイック。次世代経営者の良きアドバイザー兼温かみある伴走者として、中堅企業の尖ったサービスに専心する喜びと、大企業で大きなシステムを動かす醍醐味、 どちらにも鼻が利く。 加えて、経営者である父や引き継いだ兄との対話で 磨いてきた感性が武器で、 リアリストでありそこはかとなくストイック。 次世代経営者の良きアドバイザー兼温かみある伴走者として、粘り強い支援が特徴。経営者やリーダーの悩みや葛藤を受けとめながら、真の強みをとことん引き出す。その上で、事業をもう一段階成長させるために必要な要素を独自のバランス理論で見立てて、 人の持ち味・能力・経験の組み合わせで構築する。「組織の変革を成功させるために は、男女を問わず、人の強みを活かし合える環境が大切」。そこにある素材で最高の料理をつくる。

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㈱エッセンシャル出版は、「本質」を共に探求し、共に「創造」していく出版社です。本を真剣につくり続けて20年以上になります。読み捨てられるような本ではなく、なんとなく持ち続けて、何かあった時にふと思い出して、再度、手に取りたくなるような本を作っていきたいと思っています。

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