子どもを伸ばす言葉のマジック~言葉で人生は大きく変わる〜

子どもが成長していくときに周りの人の声かけは、とても重要です。「子どもをグングン伸ばす言葉とは?」「叱らなければいけないときは?」「褒めるより認める?」

■CROSS VIEW「子供にかける言葉」

“子どもにかける言葉”について、『子育てスイッチ』の著者・かわべけんじ先生と、『オフ・ザ・フィールドの子育て』の著者であり、ラグビーのコーチを教えるコーチをしている中竹竜二さんの視点を掛け合わせて、クロスビューしていきます。

■1、赤ちゃんのうちからできる、アイデンティティの声かけ

東京の新橋で「未来歯科」で、治療しない歯医者さんを営む、かわべけんじ先生は、37年間、子どもの「予防」をしながら、その子たちが大人になるまでをずっと見続けてきました。その経験から、「子どもが生まれた瞬間からグングン発達する88の秘訣」を発見されました。

子どものアイデンティティ(プラスのイメージの性格・人格・方向性、名前をつけたときに込めた想いなど)を5つ決めて、応援の言葉にしよう!

遺伝ではなく、個性でもなく、育て方次第で成長は変わります。たとえば、くじけそうな我が子を見たときは、「あなたは最後までやり遂げる子」なんだよと、応援の言葉をかけてあげるといいのです。

泣くということをどのように扱うかが、親子の最初の駆け引きです。子育ては全て、子どもの身体とアイデンティティを育てるためにあります。2歳くらいになると、親たちは子どもに振り回されますが、その原因は親が子どものアイデンティティを悪いように決めてしまったことにあります。「この子は○○ができないんです」と言っていませんか?

(中略)

親子指導やトレーニングをするときに、よく聞く言葉があります。

「この子はこういう子なんです」「子どもがかわいそう」

これらの言葉は、あまり好ましくないアイデンティティを育んだり、親が我が子に対して固定観念をもっていることを示しています。

(中略)

負の言葉を聞いて育つ子は、親が抱いている固定観念に沿うような形で育っていくものです。たとえば、子どもが何かにつまずいて転んだときに、親がかわいそうという顔をしながら「痛かったね」と声をかければ、本人はたいして痛くなかったとしても、「痛い」ものとして認識していきます。逆に、笑顔で「転んじゃったね、でも大丈夫」と声をかければ、痛みに強い子に育っていくものです。

「子育てスイッチ」川邉研次著より

―未来歯科 川邉研次(Kawabe Kenji)

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余程のことがない限り、子どもは、怒らないで育てたいものですよね。

「あなたは○○な子なのよ、頑張って!」と声をかける=アイデンティティで育てるは、そのための一つの素晴らしい方法だと思います。

たとえば、子どもに、「勇気をもってほしい」と思ったことがあれば、「あなたは、勇気のある子なんだよ!」と伝えたり、くじけそうなことがあれば、「あなたは、強い子ね。大丈夫よ」と声をかけることが、かわべ先生の説く「アイデンティティで育てる」ということにつながるでしょう。

アイデンティティで育てられた方の例では、『全員参画経営』の著者である、プロセスデザイナーの簑原麻穂さんがいらっしゃいます。

簑原さんは、母親に「あなたは何でもできる子なのよ」、そして「あなたは諦めない子なのよ」と言われて育ったそうです。

また、経営者の父親には「これからの時代は、手に職を持ち、自分で自分を養える経済力を持たないとだめだぞ。専業主婦という時代もそろそろ終わるから、手に職をつけなさい」と言われていたそうです。

そして、今、簑原さんは、困難や課題を抱える企業の業績回復・向上と、そこで働く人の幸せを両立させるプロセスデザイナーという天職を得て、充実したお仕事をされています。

■2、ほめるよりも、認めるを大切に

中竹竜二さんは、「ほめるではなく、認める」ということを大事にしていると言います。

―中竹竜二( Nakatake Ryuji )

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株式会社チームボックス代表取締役
日本ラグビーフットボール協会理事

実際、いいコーチは褒めません。そうではなく、事実を承認するということをしています。たとえば、ある選手のミスで試合に負けたとします。そんなときコーチはどうやって認めるのか。

「一生懸命頑張っていたけど、パスを失敗したよね」と声をかけます。

頑張っていたことも認めるし、ミスした事実も認めるのです。そして、「失敗して悔しいよね」と相手が感じていることも伝えます。いいところも悪いところもちゃんと見ているということと、悔しい気持ちもわかっていることを伝える。そこに嘘は一つもありません。

人間にとっては存在承認が一番大事です。逆に言うと、人間にとって最大の脅威は無視されることです。その人が存在していることに対して、ちゃんと見ているということを伝える。いいときも悪いときも、誰かがちゃんと見ているということが大事なのです。

「オフ・ザ・フィールドの子育て」中竹竜二著

ここからわかるのは、

■大前提の存在承認をしている。

■相手が悔しいという気持ちをわかっていると共感する。

■頑張っていることも見ているし、失敗した事実も見ていると伝える。
ということです。

また、中竹さんは、存在を承認(認める)ということについて、こう書かれています。

いいところにだけフォーカスする=褒めるという行為は、一見するといいように思われます。でも、悪いところや失敗したところだって、それが「現実のあなた」であることに違いないのです。

そんなあなたをちゃんと見ているよ、認めているよ、と伝えてあげることこそ、人にとっては大事なんですね。

それから、落ち込んで下を向いていたら、「下を向いてるね」と、心が表れている行動を言葉にしてあげるのも一つの方法です。リーダーや親というのは、仲間やわが子を何とか元気にしよう、元気づけたいと考えます。それは優しさから来ることなのですが、こういうときは、「ダメなところをさらけ出させてあげるチャンス」と捉えてほしいのです。

それによって本人がより落ち込んでしまうのではないか、と心配する向きがあるかもしれません。でも、「下を向いてるね」と言葉をかけることで、「あなたのことをちゃんと見ているよ」と伝えることができるので、本人は孤独を感じたり、八方塞がりになったりしなくて済みます。

「オフ・ザ・フィールドの子育て」中竹竜二著

ちなみに、10万人の行動を変容させた伝説のメンター大久保寛司さんも、

相手の気持ちを理解していない時、正しい言葉に説得力はありません。

相手には必ず、そうする理由があるんです。それなりに。

そこを理解して、相手の気持ちになって、一言声をかける。

人は理解された時、変わる。

変えようとするんじゃないんです。相手が変わるんです。

と仰っています。

人は理解された時に変わるのだとすれば、まず気持ちを理解することは、その人のアドバイス、言葉を受け取るための第一歩になるのだと思います。

人は、ある程度、大人になって心をコントロールできるようになってくると、自分の悔しい気持ち、ネガティブな気持ちを抑え込み、なかったことにできてしまいます。

また、人によっては、負の結果に目を向けられないという人もいます。「このプレイは苦手なんだよね」とか「また、嫌な人が目の前に現れた」とか言っているうちは、負の結果に目を向けられていない、状況を改善できていないということでもあると思うのです。

そんなとき、良いも悪いも、成功も失敗も、自分の得意も不得意も、全てをひっくるめて、「存在」を承認してもらえるという安心感は、ものすごく大きいのではないかと思います。

また、そんな全てを見てくれている人の認めてくれる言葉が、最高のほめ言葉になることもあると思います。つまり、「ほめよう」と考えるのではなく、「丸ごと認めよう」という姿勢こそが重要なのかもしれません。

■3、できたことを認める、できなければスルー

一方で、かわべ先生は「できたらほめる(認める)、できなければスルー」ということが大切と言います。

嫌なことから逃げて泣く子を抱っこするのは「過干渉」です。それによって子どもは成長をやめてしまいます。逆にそこで抱っこをしなければ、多少痛いことや嫌なことがあっても、平気で我慢できる子になります。

(中略)

「痛かったね~」と言いながら、抱っこしてしまえば、それ以降、何か痛みを感じることや嫌なことがあると、すぐに泣いて親に甘えようとしますし、その状況から逃げ出すようになってしまいます。

「子育てスイッチ」川邉研次著より

これは、良いところを伸ばしていくと、欠点も自然と伸びていくという考え方にも繋がると思います。

私は、前職で幼児~小学校低学年の子に対して、集団授業を行っていました。その時も、この方法は使っていました。

例えば、パッと自分に注目させて何かを伝えたいときには、合図をしたあと、「あ、もう先生の方を見て、話を聞く姿勢になっている子がいるね」と準備ができている子の行動を言葉にするのです。

そうすると、まだできていない子どもたちに、「早く準備をしなさい」とか「ほら、○○していないで、こっちを見なさい」などという言葉を使う必要がないのです。

少しでも良くなったことを言葉にする(認める)ということの効果は、「1:1の関係」だけでなく、「1:多数の関係」でも、あると思います。また、それは、子どもに限ったことではなく、大人に対しても、例えば、怒らずに伝えるという場面などで、活用できるのではないでしょうか。

(まとめ)

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1、アイデンティティの声かけ

2、ほめるよりも、認めるを大切に

3、できたことを認める、できなければスルー

2の「どんなあなたも認めていると伝えること」と、3の「できたことを認める、できなければスルー」は一見、矛盾するように感じるかもしれませんが、実は、どちらも正解で、どちらも大事なことなのだと思います。

ただ、しつけ的な要素については、「できたことを認める、できなければスルー」というのが、より効果的だと思います。

一方で、人との関係を築いていく上では、「弱さ、欠点、辛いことをさらけ出せるチャンス」とも捉えられるのです。

人は体の痛みは忘れても、心を傷つけられた言葉は忘れないという言葉があります。

この3つのポイントは、赤ちゃんから大人まで通用する言葉のかけ方だと思います。

是非、試してみていただければと思います。

【参考著者】

―中竹竜二( Nakatake Ryuji )

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株式会社チームボックス代表取締役

日本ラグビーフットボール協会理事

1973年福岡県生まれ。早稲田大学卒業、レスター大学大学院修了。三菱総合研究所を経て、早稲田大学ラグビー蹴球部監督に就任し、自律支援型の指導法で大学選手権二連覇を果たす。2010年、日本ラグビーフットボール協会「コーチのコーチ」、指導者を指導する立場であるコーチングディレクターに就任。2012年より3期にわたりU20日本代表ヘッドコーチを経て、2016年には日本代表ヘッドコーチ代行も兼務。2014年、企業のリーダー育成トレーニングを行う株式会社チームボックス設立。2018年、コーチの学びの場を創出し促進するための団体、スポーツコーチングJapanを設立、代表理事を務める。ほかに、一般社団法人日本ウィルチェアーラグビー連盟 副理事長 など。

著書に『新版リーダーシップからフォロワーシップへ カリスマリーダー不要の組織づくりとは』(CCCメディアハウス)など多数。

2020年、初の育児書『どんな個性も活きるスポーツ・ラグビーに学ぶ オフ・ザ・フィールドの子育て』を執筆。

◆『オフ・ザ・フィールドの子育て』の紹介◆

本書では、「多様性」というキーワードに着目し、それを独自に育んできたラグビーに学ぶことで、子どもたちに多様性を身につけてもらえる、子育てをよりよくできるのではないかと考えました。

教えてくれるのは、「コーチのコーチ」をしてきた“教え方のプロ”である中竹竜二氏。

さらに、花まる学習会を主宰する高濱正伸先生から、著者の考えに対して、「子育て」や「学び」の観点から、適宜コメントを入れていただきました。また、巻末にはお二人の対談を掲載し、ラグビーに学ぶことの意義についてご紹介しています。

改めて「ワンチーム」という言葉の意味や、ラグビーが大事にしてきた「オフ・ザ・フィールド」という考え方を知ることで、わが子の個性をどのように活かしたらよいかを考えるきっかけとし、わが子が実際に輝ける場所を親子で一緒に見つけてほしいと思います。

“サンドウィッチマン推薦! ”

ラグビーがなかったら、いまの俺たちはいなかったと思う。

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―川邉研次(Kawabe Kenji)

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1953年、愛知県半田市生まれ。歯科医師として、噛み合わせ治療や顎関節治療において、歯を削ることや抜くことに疑問を感じる。自身の交通事故による顎関節症で整体に通うなかで姿勢に着目。その後、数々の試行錯誤の末、世界初の予防歯科システム「姿勢咬合によるメソッド」を開発。削る治療から削らない治療へ、そして薬の臭いの無い歯科医院を目指し活動する。現在は、口腔内にとどまらず、全身疾患の根本的原因を捉えるトレーニング、解決を図るためのセミナーを積極的に行っている。また、20年以上の長きに渡りホワイトニングの研究・セミナーを続けており、これまでに受講した歯科医師数は、のべ1,700名以上、1,500件以上の全国の歯科医院でその技術が導入されている。著書に、「知っておきたい「最新歯科医療」」、「「身長伸ばし」5分間ダイエット」、「かわべ式 願いをかなえるハッピーノート」、「手相を描けば幸せになれる!」など多数。累計約100万部。

2020年、これまで培ってきたメソッドをまとめた『かわべ式 子育てスイッチ 〜生まれた瞬間からグングン発達する88の秘訣〜』を上梓。

◆子育てスイッチの紹介◆

本書はオールカラー!そして読みやすいペタ―っと開くコデックス装。

月齢ごとに必要なメソッドを見開きでわかりやすく紹介。

抱っこの仕方やおっぱいの与え方、泣かせ方、歯が生える前の歯磨きの方法、お口ぽかんにならないための姿勢から親が元気でいるための秘訣まで。

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㈱エッセンシャル出版は、「本質」を共に探求し、共に「創造」していく出版社です。本を真剣につくり続けて20年以上になります。読み捨てられるような本ではなく、なんとなく持ち続けて、何かあった時にふと思い出して、再度、手に取りたくなるような本を作っていきたいと思っています。

(株)エッセンシャル出版社
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