耳を活用するコンテンツの可能性と出版のミライ

こんにちは!エッセンシャル出版社の小林です。

本日のミライ会議は、Voicyの代表緒方さんと絵本作家でありお笑い芸人である西野亮廣さんとの対談をもとに、編集部の磯尾さんと、音声ビジネスに学ぶ出版のミライについて考えてみました。

↓↓音声で聴きたい方はコチラ↓↓

1、音声メディアの可能性

音声メディアというのは、忙しくなった現代に「目を使わずとも、ながらで聴くことができる」という点で、まだまだ可能性があるのではないかと言われています。

Voicyの代表の緒方さんは、今までテレビも新聞も動画も生活の時間を犠牲にして情報を得てきたので、その”犠牲”をなくして情報を得られるメディアとして、”音声”には可能性があると言っていました。

かつて、メディアの中心はラジオであった時代から、テレビに移行して、一時、ラジオのニーズが凋落した流れから、今度は、「見なければわからない」ものより、「目」を奪われずに「耳」だけで事足りるものが人気になってきたという、時代のスパイラル的な変化・進化が、その前提にあるのかもしれません。

今、私たちも「家事をしながら」「駅まで歩いていくとき」「簡単な作業をするとき」に音声メディアやラジオを聴くことが多くなっています。

また、出版の世界で言うと、「オーディオブック」にも注目がされ始めています。

2-1、映像がないからこそ、知として得やすいのか?

もう一つ考えたい点としては、そもそも、人が情報を受け取ったり、理解をするときに、映像があった方がわかりやすいのか、もしくは、映像がない方がわかりやすいのか(「知として得やすい」ということがあるのか)?ということです。

私が子どもの頃、朝は「ラジオ」という習慣がずっとありました。

当時、母が、「職場でも朝、テレビのニュースを見ている人がいるけれど、その人よりもラジオで聴いている人の方が、多くのニュースのポイントを掴んでいる」

とよく言っていました。

映像、つまり、視覚から情報を取り入れるよりも、音声、耳だけで情報を取り入れた方が、聞きながらイメージを湧かせたりして、より記憶に残ったり、情報にフォーカスしやすいのではないかということです。

これは、人によって違う場合も多いですし、個人差でかなり変わる部分もありますが、母の言うことにも一理あるのかもしれません。

本当に、映像=テレビ・動画よりも、音声=ラジオ・ポッドキャストの方が、「わかりやすい」「学びに適している」ということはあるのでしょうか。

2-2、本というメディアの特徴~没入感

この点に関して、「絵がある漫画より、ほぼ文字だけで伝える本の方が、実は、読む人それぞれが無限のイメージを広げることができる」という話と、似た構造があるのか?ということでも考えてみました。

そもそも、漫画を含めた本、活字というのは、”自分から意識的に入っていかないと”、”能動的にならないと”、読むことが難しいという特徴があります。テレビ、ドラマ、映画、音楽など、ある意味、流しているだけで情報が入ってくるという、”受動的でも受け取れる”媒体とはまた違った特徴があり、本・活字は、他と比べて、人が没入する際に、ハードルが高いメディアです。一方、自分の意思=能動的に関わることを必然的に求められる分、その分、没入したときの深さは、他と比べ物にならないのではないかとも思います。

2-3、情報が少ないからこそ、能動的に没入していく

映像と音声の違いに当てはめてみると、映像は視覚と聴覚を使うものに対して、音声は聴覚だけを使うという意味で、情報量が少ない分、視覚的な要素(イメージなど)を自ら補う必要が出てきます。

「ながら聴きができるということ」とは相反するかもしれませんが、「映像がないからこそ、自分で耳から入った音声を、能動的にイメージや情景を付加して認識する」という働きがされるようになり、「音声だけで伝えているものを聴く」方が、「映像のながら見」より、その分、没入感や、知として得るものは多くなる可能性があるかもしれません。

3、漁業系と農業系の仕事

また、その動画で、Voicyの緒方さんが仰っていた「漁業系」の仕事と「農業系」の仕事の違いについての話も、面白かったのでご紹介いたします。

「漁業系」とは、あるものをいかに効率よく、多く捕るか…という仕事です。つまり、いかに効率的に収穫して、お金を得るかという種類の仕事は、短期的に成果が出やすいので、投資家も投資しやすいのです。

一方で、「農業系」の仕事とは、土しかないところに種を植えて、育てて、増やしていく仕事のことです。そのできた農作物が、たとえば小麦だとすると、その小麦は、さらに調理しないと「パン」や「パスタ」にはなりません。そういう農作物を作るような仕事は、大変なことも多い一方で、自分たちが作ったものの上に、産業を広げるという構造を持つことも可能ではあるのです。

緒方さんや西野さんは、このような構造を持てる可能性のある「農業系」の仕事にワクワクするようです。緒方さんは、このVoicyというメディアづくりを通じて、その上に産業が広がっていくような、「農業系」の仕事をしていきたいと考えているようです。

4、身の回り、生活に音声が入っていく

Voicyが考えている、その上に広がる産業とは、音声配信から始まり、様々なシーンに、音声コンテンツが装備されているような未来です。

たとえば、お風呂に「音声コンテンツ」が内蔵されていたり、車に「音声コンテンツ」が内蔵されていたり、キッチンに内蔵されていたり…

そういう現象が生まれてくると、耳から生活が大きく変わっていくという未来も近いのかもしれません。

そして、コンテンツの内容的な視点で想像してみると、そういう未来には、より「イメージを湧かせるもの」、つまり、「イマジネーション」をより必要とさせる音声コンテンツが、どんどん増えていく可能性もあります。

「百聞は一見に如かず」とは、ある意味、本質ではありますが、一方で、ビジュアル・視覚には、「一度見てしまうと、そのイメージに固定されてしまいやすい」というデメリットもあります。

これからより求められてくる豊かなイマジネーション・クリエーションが必要な時代には、最初は「耳で学ぶ」「耳でイメージする」というコンテンツも、今後、もっと増えていくのかもしれません。

5、ご飯を食べるだけの「動画」が人気、そしてラーメンを食べるロケの「ラジオ」まで…

少し話は変わりますが、先日、Audeeというアプリのラジオ番組を聴いていたら、ゲストと「ラーメンを食べに行く」という企画が流れていました。

「ラーメンを食べる」という企画は、どちらかと言えば、映像があった方が、その価値や魅力は伝わりそうであるにも関わらず、それを音声だけの番組で行っていることに、すこし驚きました。

その企画を配信していた方に、どんな意図があるのかはわかりませんが、もしかしたら、「音声だからこそ、逆に、いろいろと想像できていい」という声も多いのかもしれません。

YouTubeでも、「食べる」系の動画が人気です。

「ユダヤの教え」にも、「食か女性を対象にした仕事をせよ」という言葉がありますが、「食」というのは、生命活動の基本であり、毎日、誰もが必ず行うことだからこそ、”皆が興味がある”ということなのでしょうか。

一見すると、特に何か知識を得られるというわけでもないのに、食べているシーンを流すだけの動画やラジオに、人が心を奪われるというのは、なんとも興味深いことではあります。

いずれにせよ、活字・文字を中心としている出版社としても、既成概念にとらわれず、耳を活用するコンテンツの可能性を、今後も考えていきたいと思います。

㈱エッセンシャル出版は、「本質」を共に探求し、共に「創造」していく出版社です。本を真剣につくり続けて20年以上になります。読み捨てられるような本ではなく、なんとなく持ち続けて、何かあった時にふと思い出して、再度、手に取りたくなるような本を作っていきたいと思っています。

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