挫折経験や評価されない経験も価値~子ども時代③

夢中で生きるように働いている人を見ていて、共通することがあるのではないかと感じています。それは「自分はどう思うか」ということがはっきりとしている点です。このような思考に至るようになるきっかけに、どのようなことがあったのか「子ども時代」を探ってみたいと思います。

こんにちは!エッセンシャル出版社の小林です。

【プロフィール】

大学卒業後、年中~小学校6年生までの子を対象とした塾、花まる学習会に入社。将来メシが食える大人になること、魅力的な人になるということを教育理念の事業で、授業や野外体験の引率などを行う。授業など子どもたちに関わる傍ら、広報部、講演会事業、ブロック責任者などあらゆる業務にも携わる。現在はエッセンシャル出版社で、本づくり、広報など、出版業に関わる全てに携わる。

エッセンシャル出版社: https://www.essential-p.com/

 

ジーンクエストの代表でゲノム研究の第一人者である高橋祥子さんは、5歳からフランスに住み、現地校に通っていたようです。そこでは、皆と違う見た目で「外国人」でしたが、皆が好意的で、日本の文化などを教え、「尊敬枠」のような関わられ方をしたそうです。そこで「人と違うということは素敵なことなんだな」という価値観が生まれたそうです。その後、日本に戻ってきたときに日本の同調圧力は感じたそうですが、髙橋さんの中に、「人と違うことは素敵なこと」という価値観は今でも残っているようです。(『ステキな大人の秘密』より。現在、電子書籍で高橋祥子さんの章だけでも読めます。KUも登録あり。)

少数派であるということは、社会不適合者のよう扱われることもあるでしょうし、自分自身で勝手にそう感じてしまう人もいると思います。特に小さいころは、身近な大人(親や先生)の言うことが全てという世界に生きているため、身近な人が、自分が「少数派」であることを善しとしてくれるか否かで、その子の価値観は変わってくるかもしれません。

話は少し変わりますが、転職理由の一番は、いつの時代も「人間関係」という要素が入ります。さらに、仕事の場面だけでなくとも、「人間関係」に悩みを抱える人は多くいると思います。

その人間関係の悩みの多くに共通していることのひとつに、「自分を認めてもらえていない感」というものがあるのではないでしょうか。自分の努力は、どんなによく見てくれている人がいたとしても、全部は見えません。

誤解されて悪く思われてしまったり、低い評価をつけられてしまったり、自分・自分の考えを大事にしてもらえなかったりしたときには、悔しいし辛くなってしまうことは、多くの人が感じてしまうことだと思います。

ただ、その中でも、他人からの評価や、何かやりたいことを語ったときに「普通はそんなことできないよ」という言葉に、心が折れない人がいます。

そのような方は、どうして、折れない心を持っているのでしょう?

以前、私が幼稚園児~小学生の塾で働いていたときのことです。年中さんで入会してきたT君という男の子がいました。

T君は、言葉の発達が著しく、図鑑を丸暗記したり、科学的な知識も豊富で、大人顔負けの知識量を持っていました。一方で、鉛筆のキャップがみつからないと大きな声で泣いて切り換えができないとか、折り紙を切る課題では、先生がやって見せたものと少し違うだけで、世界が終わったかのような絶望を感じて泣いてしまうという、ちょっと生きにくそうな一面を持っていました。

でも、とてもピュアで可愛い子で、授業が終わると私にギューッと抱きついて、「先生、今日も楽しかったね♡」と言ってくるような(私はただお仕事をしていただけなのですが、まるでデートでもしたかのような言い方)一面もあり、お母さんも「ものすごく特徴的な子なんです」とニコニコして見守っていらっしゃいました。

一言でいうと、一風変わっているのです。年中、年長と進み、小学校に入るころには、お母さんも「うちの子、調べたら、多分ちょっと、発達障害?発達の偏りが出ていると思うんですけど、ちゃんと調べた方がいいですか?」と聞いてくるようになりました。

お母さんは、診断によって特性を認識するわけでなく、T君の特性を熟知されていたので、もし、対応に困るということがあった時に、調べましょうということになりました。

その後もT君はスクスクと成長し、学年が上がるにつれ、少し正義感が強すぎるところから、友達に嫌みを言われたり、学校の先生にも「深い質問をしてきて、それに納得できるまで授業を止めてしまうので困っています」と言われたりしていました。

小学校4年生になったT君は、受験勉強をしつつ、自分が好きなことを熱中して調べ、飽きたら次の好きなことに向かうというような毎日を過ごしているそうです。凹凸をそのままに、日々、伸び伸びと生きているようです。

どんな個性も活きるスポーツ・ラグビーに学ぶ オフ・ザ・フィールドの子育て』の著者である中竹竜二さんは、ご自身が、読字障害ということに気付かず、苦労した経験があるそうです。その時に、子どもなりに、ものすごい努力をして、障害を克服したのですが、周りの反応は、「普通、それくらいできるよね」という感じで、誰も褒めたり、認めたりしてくれることはなかったそうです。

その経験を通して、中竹少年は、「人に褒められる、認められることを期待しない」という決意をしたそうです。その記事がコチラ↓↓

「人に期待しない」と決意の少年、人を育てるプロになる 中竹竜二さん

 

少数派、人とは違う、一般的な学校の指標では評価されないという経験は、人に「考える」という機会を与えるでしょう。また、その評価基準に価値を感じず、更に”一応、合わせる”ということができないが故に、「やらない」という選択肢をとる子も、「なぜ、それが大事だと大人は言っているのか?」という点について考えるようになるのではないでしょうか。

どちらにせよ、他者から「評価されない」という経験をした子どもや、「挫折」があっても、それでも「自分らしく頑張ろう」と思うようになった子どもは、大人になってからも、その後の「評価されない」という経験や、「挫折」経験にも、屈することなく、強く生きていけるのではないかと思います。

もちろん、高橋祥子さんのように、最初に持った価値観が”他人と違うことは素敵なこと”というものである場合も、その価値観が、信念のようになり、強い心を持てるのではないかと思います。

仕事をしていると、”皆と同じこと”、”他社と同じこと”は、必ずしも価値にはならないということは多くの方が感じているかと思います。また、例えば、独立して、何かで成功したい、何かで抜きん出たいと思ったときに、”他の人と同じこと”をしているだけでは、あまり価値にならないことは、明らかです。

そこで問われるのが、”自分らしくあれ”ということ。更に言えば、”自分らしさを出して、そこで勝負することが強いオリジナリティになる”ということです。

でも、そんなに、すぐに簡単に、”他者とは違う自分らしさ”で、勝負ができるようになるものでもないでしょう。

そういう意味で、”他者から評価されない”という経験や、一般的な評価軸には価値を感じないという思いを、子どもの頃から体験している人というのは、「他人と違うこと」をするという経験値を既に積んでいる分、強いのではないかと思うのです。

㈱エッセンシャル出版は、「本質」を共に探求し、共に「創造」していく出版社です。本を真剣につくり続けて20年以上になります。読み捨てられるような本ではなく、なんとなく持ち続けて、何かあった時にふと思い出して、再度、手に取りたくなるような本を作っていきたいと思っています。

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