イロハの「医」 その2 アトピーに見る「医」のあり方

アトピーに見る「医」のあり方

前回、医療の「医」という文字には、いにしえの時代から、呪術的な概念と現実的な西洋医学との融合を内包していた、ということを書きました。

言葉を換えると、そのどちらも医療の本質で、どちらか一方が欠けても医療としては成り立たないと考えられるのではないか、ということです。

対症療法と根治療法

酒(アルコール)を使って傷口を清めるという行為は、お医者さんによる「手当て」です。いまで言えば、患部に薬を塗布する行為と同じで、そうした治療法のことを一般的に「対症療法」と呼びます。対症療法とは、病気の症状を軽減する、あるいは元の状態に戻すための治療のことを言います。

それに対して、病気そのものの原因を排除する治療のことを「根治療法」と言います。がんの病巣を切除することは対症療法ですが、それで二度とがんにならないかと言うと、そういうわけではありませんよね。根治療法とは、がんが発生する要因そのものをつきとめ、二度とがんにならないようにする治療のこと。あえて「体質改善」という言葉に置き換えてもいいのではないかと思います。

この2つの治療法の特徴を簡単にまとめてみると次のようになります。

●対症療法……即効性・即応性がある。効果がすぐに見えやすい

●根治療法……長期にわたり継続して行う。効果がすぐには見えにくい

アトピー先生に見る現代の「医」

竹田綜合病院(福島県会津若松市)の皮膚科医・岸本和裕先生のもとには、全国から先生の診察を受けたい患者さんが訪れています。先生はアトピー治療の第一人者で、先生が行なっているのは対症療法です。その理由は単純明快で、「アトピーで泣いている人を、すぐに笑顔にしてあげたいから」

実際には「すぐに」よくなるわけではありません。しかし、少なくとも先生の治療を受けることで、患者さんは希望を胸に抱けるようになり、いつまでも泣いている必要はないのだということがわかる。それは先生が「患者ファースト」の姿勢を常に見せてくれる人だからです。

前回、パソコンの画面ばかり見て、患者のことを見ようとしない医者がいるという話をしましたが、岸本先生はもちろん違います。『陋巷に在り』に登場した医鶃(いげい)のように、その人の内面を見透かすような見方をするわけではありませんが、患部をじっくりと診て、手で触って調べます。さらにこれまでの治療の経緯をしっかりと聞き、いまがどういう状態なのか、なぜこの状態になったのかを五感を使って把握するのです。こうした姿勢が患者さんに安心感を与えます。

皮膚科医の中には、患部をちらっと見ただけで、「薬を出しておくから塗っておいて」というような指導をする人も多いと岸本先生は言います。薬というのは「ステロイド」のことで、うまく使わないとかえって症状を悪化させてしまいます。きちんとした使い方を教えてもらわなかったばかりに、症状をこじらせてしまう患者さんは少なくありません。そして、そういう人がステロイドを敵視し、忌避するようになり、怪しげな民間療法を頼ってしまうようになるのです。

図3

ひとりでも多くのアトピー患者さんを笑顔にしたい、でも自分ひとりにできることには限りがある。こうした状況をなんとかして変えたい――。

そこで、岸本先生が考えたのが、まずは患者さん向けに本を出すことでした。自分の体のことは自分でしっかりと守ってほしい。そのために、先生が知っている知識やノウハウを、子どもにもわかるように解説しました。また、全国の皮膚科医や、実際に患者と接する機会の多い小児科医や看護師などに本を配り、その知識やノウハウを惜しげもなく開陳しています。彼らの力を借りることで、ひとりでも多くの患者を笑顔にしたいと考えたのです。

アトピーの原因はいろいろありますが、ストレスもアトピーを悪化させる要因のひとつです。ストレスは免疫力を下げる働きがあり、当然皮膚の防御力を弱めることにつながるからです。

そうした意味で、患者さんを笑顔にしてストレスから解放してくれる岸本先生の治療は、単なる対症療法を越えて、心もケアする根治療法的な要素がたっぷりと含まれています。それは「医」の文字が示す、本来の医療の姿に近いものではないでしょうか。

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