「褒める・認める」視点の簡単な増やし方~子ども時代④

【子ども時代から学ぶ④〜子どもと一緒に体験して学んだこと〜】

「褒めて伸ばす」ということはわかっていても、なかなかできない。また、「褒めるより認める方が大事だ」と言われても、「声のかけ方があっているのだろうか?」と不安になる…ということもあると思います。

「褒める・認める」ということについて、私が、「子どもたちと一緒に体験して学んだこと」をヒントに、考えてみたいと思います。

こんにちは!エッセンシャル出版社の小林です。

【プロフィール】

大学卒業後、年中~小学校6年生までの子を対象とした塾、花まる学習会に入社。将来メシが食える大人になること、魅力的な人になるということを教育理念の事業で、授業や野外体験の引率などを行う。授業など子どもたちに関わる傍ら、広報部、講演会事業、ブロック責任者などあらゆる業務にも携わる。現在はエッセンシャル出版社で、本づくり、広報など、出版業に関わる全てに携わる。

エッセンシャル出版社: https://www.essential-p.com/

「子ども・人は、褒めて伸ばすといい」「褒めるよりも認める方が大事だ」などという言葉はよく聞かれると思います。ただ、相手にとって嬉しくて、意味のある「褒め方」や「認め方」というのは、その時々で正解が変わるものなので、「この言い方であれば、いつでも効果がある」というようなものではありません。

だからこそ、幼稚園の先生や学校の先生、塾の先生など、子どもに長い時間関わっている、視点を持っている、その学年のいろいろな子を見てきている方々は、その時々のベストな声かけの仕方を、それぞれ体得されているのだと思います。

一方で、例えば、一人目の子が生まれた時の親にとっては、自分自身が、親1年生なわけです。それまで子どもと関わることがほとんどない生活をしていた人であれば、なおさら、「褒め方、認め方」と言われても、「これでいいのだろうか?」などと、戸惑うことも多いと思います。

私が幼児や小学生の子たちを集団で指導していた頃、「次はこうしたいな」と思うことがあるときのケースを例にしてみます。

例えば、

「そろそろ次の課題に移りたい」

と思ったら、

「次は〇〇をやるから、(教材を)出してね!」と伝えたあとに、準備が速い子がいたら、「●●ちゃんはもう準備できたんだね」とできている子の名前を呼んで伝えたり、「お!1,2,3,4,5!5人の子が(先生が言った〇〇を)出し始めているね!」と伝えたりしていました。

「速く行動しなさい」とは言わないですし、褒めているわけでもなく、観察した情報を伝えてあげるということを心がけていました。

事実を事実のまま言うこと。

そういう伝え方、認め方を大切にするようにしていました。

これはビジネスの世界でも使われる「数字を見える化する」ということと同じ心理なのかなと思います。例えば、部下などに対して、「営業成績をあげなさい!」と言わなくても、目標数と営業成績が数字として見える形で出ていれば、自然と、「あと、これくらい伸ばすためにはどうしようかな?」と考えるようになるのではないでしょうか。そういう心理が自然に働きだすためにも、「数字を見える化する」ということは大事だと言われています。

つまり、人は、状況を伝えてあげるだけで、考え始めるようになるのです。「考えなさい」「〇〇しなさい」と伝えている限り、絶対に発揮されない、「能動的な動き」を増やす言葉かけと言えそうです。

もう一つ、「お!1,2,3,4,5!5人の子が、(先生が言った教材を)出し始めているね!」という声かけのケース。

この「〇〇し始めている」、「しようとしている」という言葉は、私の中では、魔法の褒め言葉・認める言葉になると思っています。出そうと思っていた子は、私の目にそう映っていなかったとしても、「自分を見てもらえた!」と心の中で思うはずです。さらに、まだ準備に入れていなかった子も、「出しはじめよう」と思えば、その時点で認められる仲間入りもできるのです。

この方法は、促進したい行動、強化したい行動の兆しをみつけたら、「〇〇できてきたね!」という声かけとしても使えます。たとえば、クラスの目標で、「朝、気持ちのいい挨拶をしよう!」と決めていたとします。先生としては、もう少し、できるようになるといいなと思っていたら、朝の会などで「少しずつ朝の挨拶ができるようになってきたね」とだけ言うのです。間違っても「もうちょっと頑張ろう!」という言葉はかけません。

「あ、私はあんまり意識できていなかったから、明日はやってみようかな」「みんなあんまりやっていないな…と思っていたけど、できていることを先生は見てくれていたんだな」

「クラスみんなで、もっとできるようになりたいな!挨拶の言葉を貼りだすという案を出してみようかな」
など、こんなふうに、その先生の言葉を受けて、それぞれの子が自分の心で何かを感じたり、考えたりすれば、それでいいのです。

「もうちょっと頑張ろうね」と言われてしまうと、「やっていない人は頑張っていない人」というようになってしまいます。また、これは子どもだけではなく、大人もそうですが、指摘されて変わるよりも、自分で気づいて変わったことの方が、圧倒的に定着しやすいのではないかと思います。

ですから、「できていること」「できるようになった一部・兆し」を見つけて、それを言葉にしてあげることがいいのです。

それは家庭でも同じことです。例えば、親が、お兄ちゃんに対して、妹に「優しくしてあげてほしい」と思っているケースがあるとします。その場合、お兄ちゃんの行動で、何か兆しがあったときに、「最近、妹に優しくしてくれるようになってきたよね」と伝えてあげるのです。

これまでにない子育てのメソッドを伝えている、未来歯科のかわべけんじ先生は、「怒りたくなったら、アイデンティティで声をかけるといい」ということを仰っています。例えば、めそめそしている子には、「そんなことで泣かないでよ!」と言うのではなく、「あなたは、勇気がある子なのよ。頑張って」とか「あなたは、諦めずにできる子なのよ」などと、その子のアイデンティティを育てるような声かけをすることが、子どもたちの成長をぐんぐん伸ばすために必要なアプローチなのです。

✳︎(子育てスイッチ』)(川邉研次著)より抜粋

人間は、特に、子どもは、自分にかけられた言葉、自分が普段から使っている言葉のような人に成長していきやすいものです。

だからこそ

1、「できたこと」「できるようになりかけたこと」を見つけて、声をかける。

2、「できてほしい」と願っていることについて、兆しを見つけたら、それを言葉にしてあげる。

3、「もっとこうなってほしい!」と思ったら、その点について、「あなたは◎◎できる子よ」とアイデンティティとして身につくように伝えてあげる。

この3つの褒め方・認め方、怒りたくなったときの言葉のかけ方を知っておいていただくと、子どもに伝えられることは、いろいろあるのではないかと思います。

また、これは、大人になってからの人間関係や仕事にも応用できます。

例えば、部下の企画力をもっと伸ばしたいと思っていた場合、「最近、提案の仕方が良くなってきたよね。この前も、この点を工夫したんじゃないの?」等と兆しを言葉にして、聞いてみるのです。

少しの兆し(たとえ、この兆しが見誤っていたとしても、否定しない問いであれば、良いのだと思います)をきっかけに、部下と話をして、「他にはどういう工夫があるといいと思いますか?」とか「こういうふうにしようと思っているんですけど、なかなできなくて」など、相手が自己認識として、自分をどうとらえているのかについて、わかる言葉を引き出していくことにも繋げていきます。

その相手の認識次第で、次の言葉かけや、次のステップの示し方などは変わってきますが、伝え方を工夫することで、少なくとも、お互いがわかりあえる可能性は高まっていくのではないでしょうか。

また、部下の視点から考えても、「少しの兆し」を見ようとしてもらっていること、認めてもらっていること、自分をわかろうとしてくれている人に対して、嫌な気持ちになることは少ないと思います。(それがただの表面上の言葉だけであれば、逆効果になる場合ももちろんありますが・・・)

いずれにせよ、一番大切なのは、本人が「変わろうとする」「やる気になる」というコミュニケーションの仕方なのだろうと思います。

【子ども時代から学ぶ・・・子どもと一緒に体験して学べること】

子どもがやる気になる、自然と頑張ってしまうような「褒め方・認め方・声がけ」の方法を探っていくと、そこには、職場や社会でのコミュニケーションにも応用できるヒントが、いろいろあるのです。

㈱エッセンシャル出版は、「本質」を共に探求し、共に「創造」していく出版社です。本を真剣につくり続けて20年以上になります。読み捨てられるような本ではなく、なんとなく持ち続けて、何かあった時にふと思い出して、再度、手に取りたくなるような本を作っていきたいと思っています。

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