★〝難治〞のアトピー患者さんが減らないのはどうして?

以前より不思議でならなかったことがあります。治療を行う病院や医師によって、アトピー患者さんの経過にどうしてここまで大きな差が生じているのか?ということです。なぜなら、ゴッドハンドを持つスーパードクターによる特殊な外科手術などとは違い、特定の病院や医師しか治せないアトピーなどあるはずがないからです。手に入れられる情報や知識、施行できる検査、扱える治療薬は、どの病院でも、どの医師でも、全国共通、同じ条件なのです。あちこちの病院を転々としても良くならないと言って訪れるアトピー患者さんを診療していくうちに、その答えが少しずつ見えてきました。そこにはこんな理由があったのです。

 

①ガイドラインの普及

このこと自体は喜ばしいのですが、診療がマニュアル化され過ぎることにより弊害が生じています。特に、大学や病院などの勉強熱心な医師にその傾向が強く、ガイドラインに載っている通りに診療しないと気が済まないというのは、大変危険です。何かトラブルがあった時の自己防衛のために、改善しなくともガイドライン通りに診療をしておくのを良しとする傾向もあります。一人ひとり病態や生活環境・社会的背景などの異なる患者さんを相手にしているのに、ガイドライン(マニュアル)に添って、正論を押し付けるだけでは到底うまく行きません。また、マニュアル医師は応用が効きません。ガイドラインは単なる説明書と考えるべきです。患者さんごとに工夫し、知恵を搾るということが何よりも大切になってきます。

 

②専門的知識が患者さんに正しく伝わっていない

これはつまり、一方通行の説明で医師が自己満足、自己防衛のために形式的に説明をこなしているだけになっているということです。うまく伝わらないと理解できない患者さんが悪いという発想。質問にも応じない。質問できないような雰囲気を作る。医師は高度な専門職ですから、勉強脳はかなり発達しているはずです。しかしながら、自分が吸収した知識を患者さんに説明する力、つまり、「伝える力」のトレーニングは受けていないので、「伝える力」が不足していると診療結果に大きな差が出てしまいます。

 

③知識と技術を身につけるだけでは改善しないことがあるという現実を受け入れられない医師

自分が全力を尽くしても良くならないのだから、「アトピーは難病」「ひどいアトピーなんだからしょうがない」「現代の医学ではこれが限界」と、医師自身があきらめてしまう……。これは一番難しい課題だと思います。つまり、「何としても治したい。逃げない。あきらめない」という「熱意」、「使命感」、「志」、「思いやり」といった「心の問題」です。

 

〝難治〞のアトピー患者さんが減らない理由は、われわれ皮膚科医自身にあったのだろうと責任を感じています。さらに、もともと私が診察を行っている福島県全域の皮膚科医療は崩壊の危機に瀕していましたが、震災後、医大を中心に完全に崩壊してしまいました。皮膚科医の質・量ともに手の施しようがない状態です。こんな状況でアトピー患者さんの診療はどうなってしまうのでしょう?

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